グレゴリオ聖歌の知識
影響
中世及びルネサンス音楽
グレゴリオ聖歌は中世西洋音楽およびルネサンス音楽に大きな影響を与えた。例えば、現代の記譜法はグレゴリオ聖歌のネウマ譜から直接発展したものである。聖歌を記譜するために考案された四角ネウマは、他種の音楽の記譜にも転用されたし、ある種のネウマのまとまりは、ノートルダム楽派によって提唱されたリズム・モードというリズムの組み合わせを表現するのに使用された。15世紀から16世紀にかけて、次第に丸みを帯びた音符が四角や菱形にとってかわったが、聖歌集では依然として四角ネウマが使用された。16世紀には5本目の線を追加した五線譜の使用が一般的になった。また音部記号|バス記号や、シャープ、フラット、ナチュラルの臨時記号はグレゴリオ聖歌の記譜法に直接由来するものであるChew, Geoffrey and Richard Rastall: "Notation", Grove Music Online, ed. L. Macy (最終アクセス 27 June 2006), [http://www.grovemusic.com]。グレゴリオ聖歌の旋律は、トロープスや典礼劇の音楽的素材となった。また「キリストは立てり」(ドイツ語:"Christ ist erstanden")や「いまぞ我ら聖霊に乞わん」("Nun bitten wir den heiligen Geist")などの現地語の賛美歌は、翻訳テキストにグレゴリオ聖歌の旋律をあてはめたものである。グレゴリオ聖歌の即興的な和声付けであるオルガヌムにはじまり、グレゴリオ聖歌は中世からルネサンスにかけてのポリフォニーの展開にも多大な影響を及ぼした。グレゴリオ聖歌は(一部改変をされながら)「定旋律|カントゥス・フィルムス」として使用されることもしばしばで、この場合聖歌の音符の連なりが和声進行を決定づけた。マリア・アンティフォナ、なかでもアルマ・レデンプトリス・マーテルは、ルネサンスの作曲家によって頻繁に編曲された。聖歌をカントゥス・フィルムスに使用することは、バロック音楽|バロック時代になって、独立したバスラインと、それに基づくより強い和声進行が規範的になるまで主流を保った。後に、カトリック教会ではミサの通常文にグレゴリオ聖歌ではなくポリフォニックな編曲を用いることを認めた。このために、ジョヴァンニ・ダ・パレストリーナ|パレストリーナやヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト|モーツァルトなどのミサ曲では「キリエ」などの通常文を作曲の対象とし、「入祭唱」などの固有文は通常含まれなかった。固有文も荘厳ミサなどでは合唱曲に置き換えられることがあった。固有文のための多声音楽を多く作曲した作曲家としては、ウィリアム・バードやトマス・ルイス・デ・ビクトリアが上げられる。これらの多声編曲は、通常もとの聖歌の要素を取り入れている。
20世紀
19世紀末にはじまった古楽への関心の高まりは、20世紀の音楽に影響を及ぼした。クラシック音楽におけるグレゴリオ聖歌の影響は、例えばモーリス・デュリュフレの「グレゴリオ聖歌による4つのモテット」や、ピーター・マックスウェル・デイヴィスのキャロル、アルヴォ・ペルトの合唱曲などにみられる。また他のジャンルでは、エニグマ (ミュージシャン)|エニグマの「サッドネス・パート1」や、ドイツのバンドグレゴリアンのポップ、ロック的アレンジ、テクノのE Nomine、ブラックメタルバンドのデススペル・オメガなどが代表的である。ノルウェーのブラックメタルバンドでは聴きやすい旋律線にグレゴリオ聖歌を用いることが多く、ボルクナガーやディム・ボガーのガルムやICS・ヴォーテックス、エンペラー (バンド)|エンペラーのイーサーンなどが著名な歌手としてあげられる。聖歌の旋法的な旋律は、現代的な音階に慣れた耳に非日常的な音を与えている。一方、聖歌そのものとしてのグレゴリオ聖歌も、1980年代から90年代のニューエイジミュージックやワールドミュージック隆盛の中で、大衆的な人気を得た。象徴的なアルバムとなったのは、サント・ドミンゴ・デ・シロス修道院のベネディクト会|ベネディクト会士による「グレゴリアン・チャント (アルバム)|グレゴリアン・チャント」(英名:''Chant'')であり、このアルバムは永遠の平穏を与えてくれる音楽として売り出された。さらに、グレゴリオ聖歌を聴くと脳内にベータ波が発生するという社会通念が広まり、「癒しの音楽」としてのグレゴリオ聖歌の人気を高めたLe Mee, ''Chant : The Origins, Form, Practice, and Healing Power of Gregorian Chant'' p. 140.。グレゴリオ聖歌はアルバム「グレゴリアン・チャント」の前にも後にも、退屈な音楽としてのパロディの対象ともなっている。有名なものでは、モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイルに登場するむち打ち修行僧が歌う「ピエ・イェズ・ドミネ」や、ミステリー・サイエンス・シアター3000のポッド・ピープルの回に登場する、パブリックドメインの楽曲だけが入ったカラオケに入っている「物憂く、ほろ苦い『グレゴリアン・チャント第5番』」があげられる "The Languid and Bittersweet 'Gregorian Chant No. 5'". ''The Mystery Science Theater 3000 Amazing Colossal Episode Guide'' p. 39. ISBN 0-553-37783-3。小惑星100019 グレゴリアニク (小惑星) |グレゴリアニク (小惑星) は、グレゴリオ聖歌の短縮形に由来している。
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Mahrt, William P. (2000). Chant. In ''A Performer's Guide to Medieval Music'', Ross Duffin, ed., pp. 1-22. Bloomington, IN: Indiana University Press. ISBN 0-253-33752-6 Wagner, P...
