ミサ曲ロ短調の知識
作曲の背景
バッハ本人はこの作品に題名を与えておらず、ひとまとめにされた4部に分かれた楽譜には、それぞれにラテン語ミサの各部分のタイトルのみが記されている。すなわち、「キリエ」(Kyrie)、「グロリア」(Gloria)、「ニカイア・コンスタンティノポリス信条|ニカイア信条」(Symbolum Nicenum、一般には「クレド」と呼ばれることが多い)、そして「サンクトゥス、ホザンナ、ベネディクトゥス、アニュス・デイ」(Sanctus, Hosanna, Benedictus, Agnus Dei)である。また、奏者の編成は部分によって異なっており、これらのことから、これを一体の作品として演奏するということは一切バッハの念頭になかったとする見解もある。一方で、自筆譜の各部には1から4の数字が順に振られており、また、バッハが宗教曲の清書譜の末尾に常に書きこんでいた "S. D. G. " (Soli Deo gloriaの略) は終曲の ''Dona Nobis Pacem'' の後にのみ記されている。いずれにせよ、演奏に2時間近くかかるという長大さから、実際の典礼において全曲が演奏されたことはなかった。バッハは熱心なルーテル教会|ルター派信者であったが、その彼がカトリック教会の典礼であるラテン語ミサをこれほどの規模で作曲したことを奇異とするのは必ずしもあたらない。当時のルター派の教会では、頻繁にラテン語のミサを行っており、マルティン・ルター自身が、ルーテル教会版の「キリエ」、「グロリア・イン・エクセルシス」、「ニカイア信条」、「サンクトゥス」の使用を認めていた。また、バッハは典礼で使用するための小ミサ曲を4曲作曲している。Wilfrid Mellers, ''Bach and the Dance of God'', Oxford University Press, 1981, ISBN 9780195202328 , p. 160.そして、ロ短調ミサ曲の「サンクトゥス」では、小さいながらも重要な改変を典礼文に行っている。すなわち、カトリック教会の典礼文では「天と地はあなたの光栄にあまねく満ち渡る」(pleni sunt caeli et terra ''gloria tua'') とするところを、ルーテル教会版の「天と地は彼の光栄にあまねく満ち渡る」(pleni sunt caeli et terra ''gloria ejus'') としているのである。
作曲の経緯
メラーズ (Mellers) によると、ロ短調ミサ曲の作曲の経緯には不明な点が多い以下は Mellers, p. 161 に基づく。。* サンクトゥスは1724年に作曲された。評価
ミサ曲ロ短調は、バッハの生涯を通しての合唱曲と神学への関わりの総決算として、フーガの技法と並ぶ象徴的な作品と広く考えられている。のみならず、しばしば「クラシック音楽」の最高傑作の一つともみなされている。アルベルト・バッソはこの作品について、次のように評している。「ミサ曲ロ短調は、全人生を捧げて書かれている。1733年に「外交的な」理由で作曲がはじまり、バッハがすでに盲目となっていた、人生最晩年に完結した。この記念碑的な作品は、「ライプツィヒのカントール」が編み出した、音楽の様式と技術のすべてを結集したものである。しかしまたこの作品は、カトリック的な神の讃美の世界と、ルター派的な十字架信仰の世界が、類のないほど衝撃的に出会う場でもある。」"The Mass in B minor is the consecration of a whole life: started in 1733 for 'diplomatic' reasons, it was finished in the very last years of Bach's life, when he had already gone blind. This monumental work is a synthesis of every stylistic and technical contribution the Cantor of Leipzig made to music. But it is also the most astounding spiritual encounter between the worlds of Catholic glorification and the Lutheran cult of the cross." Alberto Basso, "The 'Great Mass' in B minor", trans. Derek Yeld, 1999. フィリップ・ヘレヴェッヘ・コレギウム・ヴォカーレ・ゲントによる録音(ハルモニア・ムンディ、HML5901614.15)のリブレットに収録。 [http://www.harmoniamundi.com/uk/album_fiche.php?album_id=1130]C. P. E. バッハは、父の自筆譜に注釈と修正を加え、同時に自身の手で修正、改変を行っているButt, p. 26.。このことなどが理由となり、ミサ曲ロ短調の校訂は難しく、版によって大きく異なる部分がある。
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# ''Dona nobis pacem''. 四部合唱(ソプラノ、アルト、テナー、バス)。ニ長調、モデラート、2/2拍子。「グロリア」の "Gratias agimus tibi" と同曲。演奏 アメリカ合衆国ではベスレヘム・バッハ合唱団が、1900年3月27日にペンシルバニア州ベスレヘム (ペンシルバニア州)|ベスレヘムにて全曲のアメリカ初演を行ったが、...
